初めての喪主体験

父の葬儀を終えて、実家がある地元(東北の片田舎)の葬儀のやり方は、ネット上や葬儀のマニュアル本で解説されているような一般的なやり方とはかなり違うことを実感しました。

他のエリアでも同様の慣習があるかもしれませんが、地元特有またはマイナーなやり方と思われる点を挙げてみます。




通夜の前に火葬

【初めての喪主体験】(3) 葬儀の流れ」でも書きましたが、地元の葬儀は、まず火葬してから通夜、葬儀・告別式が行われます。

先に火葬してしまうので、通夜や告別式では遺骨が入った骨箱が祭壇に祀られます。すでに遺骨の状態になっていますから、参列者は故人の顔を見ることはできません。

火葬が先の「骨葬」は東北地方をはじめ、北から南まで全国に点在して行われているようです。

その由来については諸説あるようですが割愛するとして、先に火葬してしまえば、時間が経って遺体の損傷が進むことを心配する必要がないため、それ以降の儀式の日取りの設定は自由が利くという利点はありますね。

一般人でも新聞のお悔やみ欄に名前を載せる

地元では、無名の一般人でも新聞のお悔やみ欄で訃報を通知する人が多いです。

名前と自宅住所だけが掲載される無料のお悔やみ欄と、葬儀の日程まで掲載する有料の広告枠がありますが、通信手段が発達したこの時代に、地元の名士でもないごく普通の人たちが新聞で訃報を知らせる意図は何なんでしょうか?

単純に遺族が多くの人に故人を弔ってもらいたいと思ってのことなのか、香典をもらっている家に不幸があったことを知らないで香典を返さないでいると失礼になるから、お悔やみ欄を通してお互いに通知しあう手段になっているのでしょうか。

父の葬儀でも葬儀社から載せるかどうか聞かれました。私はこじんまりやるのだから要らないと答えたのですが、周りにいた近所のおばさんたちに「載せたほうがいい」と言われ、それに従ってしまいました。

他人に自宅の住所や葬儀の日程を知られていいことはないと思うので、今振り返っても、これは必要なかったと悔やまれます。

ポスターの存在

葬儀社の担当者が、集まっている親族に対して「供花やポスターの希望者はこの用紙に名前を記入しておいてください」と。供花は分かるが「ポスター???・・・何それ?」と、私は一人はてな顔。

よくよく聞くと、「ポスター」とは、昔よく葬儀会場の入り口付近に飾られた「花輪」(こんなのです)の代わりに、「花輪代」として現金を包んで遺族に差し出すのですが、その花輪代を提供してくれた人の名前をポスターに記載して会場内に飾るのです。

葬儀社によってポスターのデザインはさまざまですが、こんな感じのものです。↓

以前は、花輪がいくつ並んだかでその葬儀の盛大さを競っていた時代があったようですが、場所を取る、風であおられて倒れたり飛ばされたりする危険性がある、華美な葬儀の敬遠などの理由で、最近は使われなくなってきているそうです。

実際、造花の花輪を飾るよりも、花輪代として現金で包む方が遺族の負担を減らせるので現実的な方法ではあります。

花輪代を差し出すのは主に親族や近しいつきあいの人ですが、これは香典とは別に包みます。

生花の供花や供物は葬儀社に注文するので、誰からの贈呈なのかを示す名札が立つのは理解できますが、花輪代は直接遺族に渡すのに、こんなポスターを貼る意味があるのか疑問です。贈呈者の顔を立てるのと会場を盛り上げるツールなんでしょうね。




香典返しは当日返しのみ

地元では、基本的に香典返しは当日返しのみで、香典の金額に関わらず、一律千円程度の品物(海苔やお茶、調味料など)です。

例外として、遠方からきている親族や高額な香典を頂いた場合は、その人が住んでいる地域の慣習に合わせた額の品を返すことはあるようです。

実は、ずっと前に自治会で香典返しをなくす取り決めをしたことがあったそうです。その決定後の最初の葬儀が私の祖父の葬儀だったそうです。その取り決めに従い、祖父の葬儀では香典返しは用意しませんでした。

ところが、その直後に、よそから来ている人に申し訳ないという意見が出て、あっという間にそのルールはなくなってしまったとか。とても残念な結果だと思います。

香典は、遺族に対する弔意と葬儀の金銭的な支援の意味合いを持つ互助的なものです。願わくば、全国的に香典返しがなくなることを願いますが、個々人が香典返しを当然と思わずに、その土地のやり方を尊重する姿勢が必要だと思います。

地域によっては自治体が冠婚葬祭の簡素化を推進している事例もあります。例えば、栃木県足利市では「新生活運動の推進」として、「香典返しの辞退」や花輪をお金で包む「花輪代方式」などを積極的に推進しています。とても賛同できる見本です。

実家の自治会ではすでに「花輪代」は普通に行われているので、香典返しの廃止を復活させてもらいたいものです。

通夜振る舞いがない

これは地元特有というよりは、自治会の取り決めによるもので、何年か前に通夜振る舞いをなくしたそうです。

通夜振る舞いがないので、参列者数を予想しにくい通夜の料理の手配に困りませんし、その分の費用も省けます。

葬儀後の会食は会費制

地元では、葬儀後の会食(精進落とし)は会費制です。金額は1万円が普通だと聞きました。

通常、仕出し屋のお膳(一人7千円)、引き菓子、飲み物を提供するので、会費が余ることはありません。我が家の場合、夫婦で参列している親戚からは1人分しかもらわなかったし、母や兄弟からは徴収しなかったので持ち出しが出ました。

それでも葬儀後の会食が会費制だと費用負担がかなり減るので、遺族側は助かります。

墓への納骨は骨壺を使用しないで直接骨を納める

テレビや映画では、お墓に納骨するときに骨壺をそのまま納めるシーンをよく見かけますが、地元では骨壺は使いません。

火葬後の遺骨はすべてを骨上げして骨箱に収め、納骨の際は、その骨箱からお墓に遺骨を全部移しかえて納骨します。

なので、お墓の納骨スペースの蓋を開けると、代々の故人の遺骨が丸裸で見えます。

最初その光景を見たときは少しぞっとしました。それに骨ってなかなか土に還らないものなのだと知りました。

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総体的に、地元の葬儀は相互扶助的な意味あいが強いので、遺族の負担を軽くするための取り組みがされています。

ポスター(花輪代)の存在、通夜振る舞いをなくする、葬儀後の会食を会費制にするというやり方もその一環です。一時的ではありますが香典返しを廃止した動きもありました。

その代わり、葬儀・告別式に呼ばれる近親者の負担が大きくなる傾向があります。香典、ポスター(花輪代)、会食の会費など、最低でも3、4万円以上はかかります。

もらったものは同額を返すのが基本なのでお互い様なのですが、個人的にはもっと簡素にできるところがあるように感じます。が、その土地のやり方を無視するわけにもいかないのが田舎の葬儀です。

地域によって葬儀のやり方は大きく異なることがあるので、知らずに参列すると戸惑うかもしれません。遠方の葬儀に参列する場合は事前にネットで調べておいた方がいいでしょう。

⇒「【初めての喪主体験】(5) 喪主がやること」につづく