【初めての喪主体験】(2) 自宅葬の選択

一昔前までは、実家がある地元では通夜も葬式もすべて自宅で行うのが普通でした。25年くらい前の祖父の葬儀も自宅でした。

その後、地元に公共の集会所ができてからは、その集会所で葬式をするのがほとんどのようです。

生前に父から葬式に関しての要望はなかったので、葬式のやり方は残された家族にまかされたわけです。

葬式の準備はほとんどしていなかったのですが、父が亡くなる前の母との会話で、「自宅でこじんまりがいいよね」という話だけはしていました。




自宅葬にした理由

集会所を使わずに自宅葬にした理由はいくつかあります。

 小規模に和やかにやりたい

父は80歳で他界したので、仕事をリタイヤしてから20年経っていました。社交的でもなく、最期は長期入院生活だったこともあり、外部とのつきあいは親戚と親しいご近所さんぐらいだったので、葬儀に呼ぶ人が多くないことが一つの理由です。

そして、私も母も冠婚葬祭は派手なのが苦手で、なるべく小規模にこじんまりが落ち着く性分です。顔を見知った深いつきあいのある親族、知人に人数を絞って、住み慣れた自宅でやる方が家族の精神的な負担も少ないと考えました。

幸い、実家は昔の造りなので、仕切りの戸を外せば結構な広さになるため自宅での葬儀が可能でした。

それに、火葬以外はすべて自宅内で完結するので集会所への移動が不要です。葬式は3月上旬で、まだ雪が残る寒い時期でもあったので、移動が少ないことは高齢者が多い親族にとっては都合が良かったと思います。

一人暮らしの高齢の母の葬祭づきあいを軽減させたい

父の入院後、母は実家で一人暮らしになりました。足腰が弱い、車は運転できない、公共の交通機関も乏しい、という環境に住んでいるので行動範囲は限られています。

どこかで不幸があってもすぐに駆けつけられないことが多いです。

祖父母の代までは縁があったけれど、父母の代ではほとんどつきあいがなくなった親戚には葬儀の案内は出しませんでした。

母は、祖父母に近い親戚の一部の人を知っているとしても、もうほとんどつきあいはありません。当然、私は会ったことがない人たちが多いので顔を見ても誰だか分かりません。

今後老いる一方の母にはそんな遠縁の親戚とのつきあいは重荷になるだけなので、これを機に冠婚葬祭のつきあいがなくなった方が幸いだと考えました。

また、葬儀に呼ぶ集落の住人は本当に親密な人に絞りました。集落内ではつきあいが深い浅いにかかわらず、不幸があると香典のやり取りはするので、今後はその関係で十分だと思います。

お手伝いさんも高齢化しているので頼みにくい

地元では、葬式となると親しいご近所さんにお手伝いを頼む慣習があります。祖父母の葬式のときも、常に家の中は親族以外にもお手伝いさんたちで溢れていた記憶が強いです。

田舎は近所付き合いが密接なので、葬式の際にも、真っ先に親しい近所の人が集まってバックアップする体制になります。

全体の指揮をとる人、遺族や親戚メンバーの食事作り、弔問客の対応、留守番、会場の準備や靴当番・駐車場係など、10人前後はいたと思います。

しかし、高齢化と過疎化が進む地元では、隣り近所も高齢者ばかりで、若い人は数える程度。葬式のお手伝いを頼みにくい年代が多いのです。

自宅でやれば、集会所でやるよりもお手伝いさんの数を減らせます。

それに集会所までは車移動が必要。自宅だとお手伝いさんは全員徒歩30秒~5分程度で集まれます。

そのため、近所のお手伝いさんは3人に絞りました。減らしても年配者ばかりでしたが。80代の男性重鎮に全体を見渡してもらい、その他のことは70代のおばさん2人にお願いしました。

さらに、お手伝いさんの負担を減らすため、

自宅で食べる身内(遺族・親戚・お手伝いさん)の食事はお手伝いの女性陣に作ってもらうのが地元の慣行ですが、今回はその食事を業者 (仕出し屋) に頼んで、女性のお手伝いさんの負担を極力減らしました。

これに関して80代の重鎮から、手伝いのおばちゃんたちに作ってもらえば安く済むのにわざわざ金をかけている、と言われました。が、私は今でもそれで良かったと思っています。

自宅で小規模にやりたいのでお手伝いの数も減らしたい、でも頼める人は高齢者ばかりなので少しでも負担を減らしたいと思いました。

それに、これは個人的な感覚なのですが、他人が自宅の台所に入ってあちこちかき回されることに抵抗を感じます。

身内の食事は業者に頼めば、料理を作るお手伝いさんの労力も減るし、台所も煩雑にならずに済むので、双方にとっていいと思うのは私だけでしょうか。

都会は近場に外食できるお店や出前がとれるお店が多いので困ることはないと思いますが。

いずれにしても、高齢化・過疎化が進む集落では、いつまでも従来のやり方が通用しないのはわかりきっています。慣行だからとは言ってられない状況になっているので、そのときどきで対応を変えて行く必要があると感じます。




葬儀の形式は家族葬?小規模な一般葬?

父の葬儀は自宅でやりましたが、通常どおり通夜と葬儀・告別式を行い、香典も頂戴しました。

地元では、一般の弔問者は通夜に参列し、葬儀・告別式は近親者で行うのが普通です。

通夜は参列者を限定しなかったので、葬儀・告別式の参列者18人(親族、親しい近所・友人)以外にも、周辺の人が10数名参列しました。それ以外にも、玄関先で香典を置いていく人や、個々に弔問に訪れた人も複数いました。

正直、父の葬式が、家族葬と呼ばれるものなのか、小規模な一般葬と呼ぶべきものなのか、適切な形式の呼び名は分かりません。無理矢理当てはめる必要もないんですけどね。

家族葬には明確な定義がないので、個人や葬儀社によっても解釈が異なっているのが現状ですよね。

大雑把には、家族葬は家族や親しい人を中心とした小規模に行う葬式のことを指しているようですが、どんな内容で誰に知らせるのかは、故人の遺志や遺族の意向によって異なっているようです。

が、一方では「家族葬は家族 (遺族) のみで行う葬式のことだから、それ以外の人は呼ばないし、香典も弔問も断るのが普通」だという認識も多くあります。

どちらにも共通しているのは、小規模な葬式ということのようです。

家族葬が通夜も葬儀・告別式も親族のみに限定する形式だとすれば、通夜は参列者を限定しなかったので、形式的には一般葬と言えるかもしれませんが、参列者は少なく小規模な内容だったので家族葬とも言えます。

ここではシンプルに自宅葬とだけにしておきます。

最近、都市部では家族葬を筆頭に、火葬のみの「直葬」や、通夜を省いて火葬と告別式を同日に営む「一日葬」の需要が伸びているそうです。個人的には、自分の最期に直葬の選択肢を入れてもいいと考えています。

ただし、田舎の葬式は相互扶助的な意味合いが強いので、その土地のやり方にある程度寄り添ったほうがスムーズに行くと、父の葬儀の喪主を務めて感じました。その方が、近所づきあいに支えられて暮らしている母のためにもなります。

そんな田舎でも、通夜も葬儀・告別式も身内のみで行い、香典は玄関先でいただく自宅葬/家族葬がちらほら出てきたと、最近母から聞きました。

自宅葬のメリット・デメリット

実際に自宅で葬儀をやってみて感じたメリットとデメリットについてお伝えします。

自宅葬のメリット

自宅で葬儀をやって良かった点は、葬儀社、親族、お手伝いさんを含む関係者が常に同じ空間にいたので連絡が取りやすく、緊急事態にも即対応できました。

会場が別だと、自宅に忘れ物をしてきたとか、誰かに連絡したいけど手元に電話番号がないなど、余計な手間や時間がかかって、物事がスムーズに進まないことが多くなるのではないでしょうか。

他のメリットとしては、全員の距離が近いので儀式もそれ以外の時間も和やかに過ごせたことです。

久々に集まる親戚や近所の人たちが談話する時間がけっこうありましたし、通夜や葬儀・告別式も、それほど堅苦しくなくリラックスした雰囲気がありました。自宅葬であっても喪主は気疲れが多いですが、会場が自宅(実家)というだけで精神的な負担が和らぎます。

もちろん、お手伝いさんを減らせたこと、集会所への移動がないのでラクだったこともあります。

自宅葬のデメリット

まず、葬儀の規模(集まる人数や祭壇・供花などの有無・大きさなど)にもよりますが、自宅がある程度広くないと物理的に無理です。

10人程度であれば、マンションやアパート、小さめの一軒家でも可能な気がしますが、その辺は葬儀社が慣れているので聞いてみましょう。

次に、自宅でやると、家具の移動やレイアウトの変更を伴うほか、人や業者の出入りが多くなるので煩わしくなることは否めません。3~4日の我慢ですが、会場を借りてやればこの煩わしさかなり減るのは確かです。

⇒「【初めての喪主体験】(3) 葬儀の流れ」につづく